「ネトウヨ怒りの国歌斉唱」とステキな負け惜しみ 日之丸街宣女子2巻感想
「日之丸街宣女子」(以下日之丸)の2巻が発売された。
- 作者: 富田安紀子
- 出版社/メーカー: 青林堂
- 発売日: 2016/09/10
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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前巻ではヘイトスピーチを巡る差別主義者と反差別主義者の攻防をメインに描かれていたが、差別主義者を(自称)「日本が好きなだけの普通の日本人」的に美化して描く一方、反差別を「北斗の拳」のモヒカンもかくやといわんばかりの暴徒に仕立て上げるなど、現実を捻じ曲げてヘイトスピーカーに都合よく仕立て上げられた世界観には(悪すぎる意味で)目を見張るものがあった。
あまりの素晴らしさに感想も書いてしまった。
さて、本巻では所謂「グレンデール市に置ける慰安婦像設置に伴う米国在住の日本人、ないし日系人イジメ」がメインテーマとなっている。
そう、右派の間で大々的に喧伝されてはいるものの、何故か被害者が名乗り出なければ海外の人権団体や弁護士も一切のリアクションを見せず(日本よりも遥かに人種・民族差別問題に鋭敏な米国ではまず有り得ない反応である)、現時点では都市伝説の域を出ないグレンデール市のアレである。
実際、「日之丸」の作画を担当している富田安紀子氏もエミコヤマ氏とのやりとりで「日本人イジメ」の具体的な証拠を何一つ提示できず、渋々ながら事実上それをデマであると認めざるを得なかった。
そのわりには著者の挨拶でこんな開き直りをしているのだから意味がわからない。
(中略)2巻ではグレンデールの慰安婦像を扱っていますが、今度は「デマ」だそうです。
隠さなきゃいけない事でもきっと描かれているのでしょう。
「今度は」ではなく「今度も」の誤りであると思うが、2巻を通読してもやはりデマ批判を覆すだけの根拠は提示されていない。
書籍に於ける帯の役割は重要である。
限られた文字数でその本がどのような内容であるか、いかに手に取りレジに持って行きたくなるようなコピーを用意できるか。
編集者の腕の見せどころではあるが、流石は(自称)「日本が好きなだけの普通の日本人」向けに特化した青林堂だけあり、「日之丸」の帯も他社のそれとは一味も二味も違う。
帯(表)からして
「私達は二度と韓国に謝らない だって私達は何一つ悪くない」
である。既に慰安婦問題日韓合意が結ばれた現在において、この居直りは開き直りを超えて現実逃避である。
裏は裏で
新章の舞台は米国グレンデール
と、これまた随分と扇情的な文言が並べ立てられている。
一応補足しておくと、本巻で展開されている「慰安婦像の設置に端を発する日本人イジメ」なる物語自体は確かにヘイトクライムとしか言いようのないものである。デマだけどね。
本巻の大まかなストーリーをまとめるとこのような感じだろうか。
・主人公の友人でアメリカに引っ越した「須藤桜良」が、慰安婦像の設置に伴うヘイトクライムの被害者になる(加害者は勿論韓国系)。
↓
・主人公とその仲間たちで夏休みの研究課題に従軍慰安婦問題を取り上げることを提案。反撃の狼煙があがる
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・加熱する執拗なジャパン・バッシングに耐える(自称)「日本が好きなだけの普通の日本人」。
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・研究成果をネットで国内外に配信。従軍慰安婦問題の肯定派と否定派で激しいバトル。
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・結果は主人公たちの圧勝。研究成果を発表した後に何故かネトウヨ怒りの国歌斉唱
最後の国歌斉唱が意味不明だって?大丈夫、私も読んでいて軽い目眩をおぼえた。この部分に関しては後日続きを書こうと思う。